2020/11/21【スタッフブログ】山内

映画『時計じかけのオレンジ』をもっと楽しむためのアレを解説

時計じかけのオレンジ

出典:Amazon

映画『時計じかけのオレンジ』を、
ちょっと変わった視点から解説してみたいと思います。

変わった視点というのは、
本作のメインテーマ「暴力と性衝動」をサブテーマとして扱う視点です。

「暴力と性衝動」を絡めた解説なら、
私よりも遥かに上手な解説がネット上にたくさんあるから・・・、
というのも理由の一つです。

しかし、一番の理由は、
今回解説するアレに着目したらもっと楽しめるぞ!
という発見をしてしまったからです。

ハードルが上がってきましたね笑。

本作が「暴力と性衝動」というテーマを通して描いているのは、
爪の見せ方、隠し方です。

「能ある鷹は爪を隠す」という言葉があるように、
本作の主人公アレックスは頭が良く、
爪の見せ方、隠し方が非常に巧妙です。

ここでいう爪、というのは、
「自信」という言葉に集約されます。

自分が本当にやりたいことや欲しいものに対する欲求を隠さないことと、
それを手に入れられるという確信めいた行動や発言、態度。

これらをひっくるめて「自信=爪」として、以下、解説を進めます。


本作は、3つのステージ(3幕)で構成されています。

第1幕は、日常ステージ。

暴力や性衝動にまみれた生活を送る主人公から、
爪の見せ方、隠し方を学びます。

第2幕は、監獄ステージ。

逮捕され懲役を受ける主人公から、
爪の見せ方、隠し方を学びます。

第3幕は、日常ふたたびステージ。
(ネーミングに対するクレームは受け付けていません。)

監獄から帰ってきた主人公から、
爪の見せ方、隠し方を学びます。


まずは、第1幕の日常ステージ。

このステージは、アレックスの成功と挫折を描いています。

アレックスの不良仲間に対する爪の見せ方は、
一見上手くいっているように見えて、実は失敗していました。

担任の先生に対しても、上手く爪を隠せているつもりが、
第1幕の終わりで失敗していたことがわかります。

といっても、失敗だらけというわけではありません。

成功から失敗への転落を描いている点が見どころポイントです。

もっとも象徴的に成功を描いているのは、
レコードショップで女の子に声を掛けるシーンです。

声を掛ける直前に、店員さんに対して爪を見せまくる対応をしていました。

その直後、女の子に爪を見せまくる声の掛け方をしています。

店員さんには「すいません」と声を掛けていたら、
きっと上手くいきませんでした。

あまり大きな声で言いたくないのですが・・・、
行動と態度で爪を見せまくりながらも、
「音楽を聴かせてあげる」と爪を隠して誘っていました。


続いて、第2幕の監獄ステージ。

監獄内では2年間、徹底して爪を隠し通します。

ここでは、爪は見えていなくとも、
折れてしまっているわけではない、というのがポイントです。

気がつけば、本当にやりたいこと、欲しいものを諦めて、
爪を折ってしまっていませんか?

能ある鷹は爪を折らずに隠し通すのです。

そして、タイミングを見計らい、
ここぞ!という時に爪を見せてアピールします。

アレックスは、爪を隠して信頼を勝ち取り、
爪を見せて、監獄から出るチャンスを掴んでみせました。

隠していたナイフで刺すほど、深く刺さると言います。

相手の抵抗を掻い潜って突き刺せるからです。

アレックスはナイフの隠し方、刺し方を学んだのです。

しかし、本作の面白いところは、
アレックスが隠したナイフを刺せなくなることです。

暴力や性衝動を思い浮かべただけで、
全身が抵抗し、吐き気を催すという洗脳を受けたためです。

それと引き換えに出所することができましたが、
時計じかけのオレンジとなってしまいます。


ラスト、第3幕の日常ふたたびステージ。

洗脳により、爪を見せることができなくなったアレックス。

かつて暴力を振るった相手に、次々と仕返しを受けます。

しかし、最終的にアレックスは、
爪を隠したまま、やりたいことや欲しいものを手に入れてしまいました。

観ていた人にはなぜ?という疑問が浮かびやすいこの部分、
勧善懲悪や因果応報を信じる日本人には納得がいかない展開でもありましょう。

「暴力と性衝動」の快感や欲求に対する社会的な抑圧を解放する、
ということがテーマだからだ、と言ってしまえばおしまいですが、
ここは、「爪」という視点からもう少し深掘りしてみましょう!

まずは、「爪」という言葉の定義を改めて確認します。

・自分が本当にやりたいことや欲しいものに対する欲求を隠さないこと
・それを手に入れられるという確信めいた行動や発言、態度

これらは、あくまで自分にとって、のものです。

だからこそ、人に見せすぎると反感を買い、周りに折られてしまいます。

しかし、本作の最後、周りの大人たちからは、
アレックスは「暴力と性衝動」にまみれていることを望まれていました。

つまり、自分にとって、だけでなく、
相手にとって、でもある環境を手に入れたということです。

『 自分が本当にやりたいことや欲しいものを手に入れるためには、
  「爪を見せること」が望まれる環境を手に入れること。     』

これが、本作を「爪」という視点から見た結論となります。

何かを相手に伝えようとするとき、
あえて振り切った例を挙げると分かりやすいことがあります。

まさに本作がそれで、
本当にやりたいことや欲しいものという変数に、
「暴力と性衝動」という数値を代入し証明して見せた作品です。

そこで使われた公式(真理)が、上記の結論でした。


さて、いかがでしたでしょうか。

アレックスの爪の隠し方、見せ方に着目すれば、
本作をただ観るよりもっと楽しめると思います!

ぜひ一度、観てみて下さい。

Amazonプライムで観れます。
それでは、山内でした!


- Written by " yamauchi@ryokuchi.co.jp ".

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